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| 僕の行方 |
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| ユキでいた頃は、手を伸ばせばそれが掴めた。克己を取り戻してからそれを失った。 記憶がないのに、失ったことだけが分かる。曖昧で、だけど幸福な感覚だけが微かに残り、それを失った寂しさに、朝、涙する。それはこれからもずっと続くのだろうか。あの夢を見ながら、幸福な眠りと涙の目覚めを繰り返し、味わい続けなければならないのだろうか。 「蘇我さん」 思い出したい。強く願う。 「もう一度、身体に聞いてください……」 惚けたような顔をした蘇我が、克己を見る。 「思い出したいんです」 「馬鹿か? そんなことしたって」 「どうしても思い出したいんです。お願いします」 立ち上がり、頭を下げる。 「いつかのあれは、俺が悪かったよ。お前がほら、しつこいからよ……」 「分かっています」 だけどそれだけではなかったはずだと今は思う。 蘇我だって思い出して欲しかったのではないか。だからああいうやり方で、克己を試したのではないか。 「何でも試してみたい。お願いします」 呆れたように溜息を吐いている蘇我に必死に食い下がる。 どうしても、どうしても思い出したい。 身体に聞いたら思い出すかもしれない。夢の出来事を再現したら思い出すかもしれない。 「お願いします」 苦しくて、潰れそうだ。この苦しみが何なのかも分からないのに、ただ苦しいだけなのは、もう嫌だ。 「思い出させてください」 どうか。 もう一度、身体に聞いてください。 僕に、あの幸福を、思い出させてください。 |
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