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彼シャツ〜明るいほうへ番外編〜
5

 俺の声を聞いた遠藤くんは、悪戯し放題だった両手を離し、せわしげに自分のユニフォームのベルトを外し、前を寛げた。どこも脱がないまま、欲望だけを取りだし、俺を見上げる。縋るような目はあどけなく、色っぽい。
「充」
 名を呼び、もう一度俺の腰を掴んできた。遠藤くんの声に応え、持っていたシャツの裾をもう一度たくし上げ、誘導されるまま遠藤くんの上に沈んだ。
「……あ……あ」
 ソファに膝を付き、遠藤くんの上に跨るようにしながら腰を落としていく。下着を履いたはしたない格好のまま彼を咥え込み、遠藤くんもユニフォームを着たまま、ソファの上で繋がっていく。
 体重に任せて埋まっていくのを、力強く持ち上げ、また下ろし、調節していく。息の合った二人の共同作業はスムーズに進み、やがてぴったりと奥深くまで収まった。
「は、ぁ……」
 お互いに顔を見合わせ笑い、唇を合わせる。
 見つめ合ったままシャツを掴んでいた手を離し、遠藤くんの目の前でボタンを外していった。全部を外し終え、開くと、アンダーシャツの裾を遠藤くんがたくし上げてきた。露わになった胸の先端に吸い付いて、そうしながら揺らしてくる。
「あ、ん、ぁん……はぁ、あ……」
 揺れに合わせて自分からも腰を蠢かす。ギシギシとソファが鳴り、それ以上の大きな声と、溜息が聞こえた。
 窓の外は厚い雲で暗くなり、風の音がする。外よりも湿った空気が部屋に立ちこめ、室温が上がっていく。
 風の音と、淫靡な水音と荒い呼吸音とすすり泣きのような声が交ざり合った。それが速さを増していき、体の中にも激しい嵐が巻き起こる。
「イ……キそ……遠藤く……っ、も……イ、ク」
 太い首を抱いて訴えると、息の上がった遠藤くんも「うん……俺も」と言った。
「あ、あああ、あぁ、は……っぁあん」
 激しく突き上げられ、首を抱いた体が仰け反る。
「ぅ……っ、くっ……」
 俺の腕の中で遠藤くんが呻き、温かい感触が中に訪れる。ほんの少し遅れて、俺にも同じことが起こった。
「ぁああ、ああっ」
 きつく目を瞑り、放埒の瞬間を迎えた。遠藤くんは俺に合わせて腰を揺すり、自分も余韻に浸っている。
「……ん、っ、ふぅ……」
 溜息を吐きながら遠藤くんに揺らされていた。
 遠藤くんの神聖なユニフォームが俺の邪な邪液で濡れている。
「……もう。汚れちゃったよ」
 俺の文句に遠藤くんが「え?」と見上げてきた。
「洗濯しないと。台風来るのに」
「あれ?」
「ヨシくんたちに申し訳ないなあ」
 憧れのコーチがユニフォームを着たまま、こんないやらしいことをしてるだなんてと、遠藤くんを睨んだ。
「え、俺?」
 俺を乗せたままの遠藤くんが驚愕の表情をしている。
「そうだ。帰ってくるなりこれだもの」
 だから休日は油断ならない。体力の温存はやはりかかせない。というか、温存する前に使っちゃってどうするんだよ。
 ソファの上での態勢が不安定なので、遠藤くんに手伝ってもらいながら体を下ろした。
 納得いかないような顔をした遠藤くんの前で身繕いをする。
「ほら、早く風呂入ってきなよ。ユニフォーム、ちゃんと洗濯機に入れてな」
「……はい」
 シュンとしている遠藤くん。
「俺も汚れちゃったから、一緒に入ろうか」
 そう言うと、パ、と顔を上げた遠藤くんは、わほん、と笑って「はい」と元気よく返事をした。



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