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たったひとつ大切に想うもの |
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「りく……んっ、ああ……」 僕の名を呼びながら、小さく首を振っていやいやをする様子が可愛いと思った。 さっき俊彦がしてくれたことを僕もしようと体を沈めると、俊彦が慌てて僕を引き上げた。 「僕もしたい」 下着の上からギュッと握って抗議をする。 俊彦は困ったように笑って気弱に「いいよ、そんなこと、陸にさせたくない」と言った。 「なんで? したい。する」 下着のゴムを引っ張って、中のものを出そうとした。 両脇に入った腕が、力強く僕を持ち上げて、僕は俊彦の前に座らされた。 「嫌だ。したい。俊彦、邪魔するな」 僕がするって言ったらするんだと睨んだら、俊彦が笑った。本当に嬉しそうに笑った。 笑いながら抱きしめられて、僕の肩に乗った俊彦の喉が「陸」って言った。 僕はまだ行為を諦めていなくて、身じろぎしながら掴んだ手を離さずにいたら、体を起こした俊彦は、穏やかな顔で「本当に、いいから」と言いながら、僕の背中を撫でた。 背中の中心を指先でつっと撫でられて、「んっ」と反り返る。 それから両脇に手を入れると、両方の親指で僕の胸の中心をくりくりと弄り始めて、思わず自分の手を離してしまった。 「今日は、いい。今日は俺が陸をもっと可愛がりたい」 優しく動く口元を見つめながら、俊彦の指の動きに溶かされていく。 「ずっと、こうやって、陸を可愛がりたかった」 持ち上げられた僕の胸元に俊彦の唇が触れた。 「あ……んんぅ」 鼻に抜けるような甘えた声だと思う。挟み込まれた小さな突起が俊彦の舌に転がされて、痛痒いような、疼くような感覚に陥って、自然と力が抜けた。 チュッ、チュッ、と啄むように何度も吸われて、その度に疼きが広がっていく。俊彦の唾液によって濡れて光っているそれは、小さいながらもツンと尖ってますます敏感になっていく。 育っていく僕の果実を確かめるように指で捏ねて、また口に含まれ、中で転がされる。飽きることなく繰り返す姿が甘えているようで、僕は微笑みながら俊彦の髪を撫でた。 胸に顔を押し当てたまま、僕を見上げる表情は、子供のようにあどけなくて、溶けそうに柔らかい。 胸の横にも、首筋にも、脇腹にも、俊彦の残す花びらが散っていく。キスをしては僕の顔を覗き、僕が笑うと安心したように淡く笑って、紅い印を付けていく。 僕も同じ印を俊彦に付けたくなって、ベッドを背もたれにしながら力の抜けていた体を少し起こして、俊彦の首に顔を寄せた。柔らかい喉の下へ唇を付けて強めに吸った。張りのある浅黒い肌に、僕の所有の跡が印される。 僕のものだ。 小さな印を確かめて、反対側へ顔を移し柔らかい場所を探しながら、大人しく僕のされるままになっている体を撫でていった。 Tシャツの中へ潜り込ませた手をゆっくりと動かしながら、しっとりと汗ばんだ弾力のある肌の感触を楽しむ。そうしながら小さく口を開いてキスをせがむ。 落ちてくる唇を受け止めて、与えられる愛撫に応え、僕も俊彦に愛撫を施していく。 降ろしていった手が、俊彦の下着の中へと入り、張り詰めて、すでに濡れている俊彦自身を捕まえる。 一瞬ビクリ、と身をすくませた俊彦は、僕の動きを素直に受けとめて、僕の愛撫を受け入れた。唇を軽く合わせたまま、甘い吐息を漏らしながら、じっと僕の動きに身を任せ始めた。 濡れた先端を親指で撫でて、さらにそれを広げるように丸くて滑らかな亀頭を可愛がる。 「あぁ……」 合わせた唇をそのままに、俊彦が薄く目を開けて僕を見た。蕩けそうな表情にもっと感じて欲しいと新たな欲が沸き上がってくる。 下着をずらし、全部を取り出して、先端を可愛がりながら、別の手で太い幹を擦った。視線も唇も合わせたまま、俊彦が僕の施す愛撫に溺れていく様を見ていたかった。 次第に息を弾ませ始める表情に、僕自身もまた高まっていく。だけど、俊彦は僕の促す動きに付いてこようとはせずに、じっと受け入れながらも体を硬くしている。 僕の与える快感に、感じて乱れて欲しいのに、俊彦は必死に我慢をしようとする。甘い吐息は漏らすのに、揺れそうな体を強ばらせて耐えている。 昔、俊彦の動きを獣のようだと罵った。 ここでもまだ、俊彦は傷ついたままだったのだ。 「りく……」 見つめる瞳は悦楽に溶けて、ひどく隠微でそれが嬉しい。だけどその口元は溺れたくないという意志に制御されて苦しそうだった。 |
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