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幸せの端数 |
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か細い声と溜息が上でしている。我慢しきれず時々小さく漏らす声が、可愛らしい。 踵がシーツを蹴る。構わずに舌を動かしていると、両足でキュ、と頭を挟まれた。動きを阻止しようとする仕草に笑い、だけど止めない。深く吞み込み、同時に差し入れた指も蠢かす。 「……っ、は……、ぁ、あ」 ヒクン、と白い胸が跳ね、陸が仰け反る。俊彦の舌と唇で育てられた屹立が、震えながら涙を零していた。 閉じていられなくなった足が自然と緩み、代わりに指が下りてきた。髪に差し入れられ、かき混ぜられる。 「は……、は……」 身体が波打ち、息遣いが変わる。呼吸に合わせるように、窄ませた唇を上下させ、舌を搦め、吸い上げた。 俊彦の髪に絡まっていた陸の指が再び滑り、頬から顎、そして喉へと当てられる。俊彦の声を、陸が感じている。自分の声が聞きたいのかと思い、望みの通りに声を上げた。 頑なだった陸の蕾は、俊彦の執拗な愛撫によって柔らかく解けていた。蜜はますます溢れ、後ろにある俊彦の指まで濡らす。それが嬉しくて、何度も可愛がってあげた。 「まだ……ぁ、とし、ひこ、……あ、まだ……?」 舌足らずな声で、陸が早く繋がりたいとねだってくる。一晩中でもこうして陸を可愛がりたいと思う。 「俊彦……、俊彦」 自分を呼ぶ声がする。耳を愛撫されているような、甘い声だ。 「俊彦、もう……、俊彦……」 唇を離し、身体を起こした。今にも泣きそうな、それでいて恍惚とした顔をした陸が、見上げてきた。両腕を伸ばされ、その中に入るようにして身体を倒す。唇を重ね、舌を搦めた。 「……ん、ぅ、ん、ぁ……ん」 柔らかく、熱い舌が俊彦を捕らえ、中に引き入れられた。好きなだけ味わわせ、自分も味わった。 「……陸、可愛い」 辛そうに眉根を寄せ、それでも俊彦を貪ろうとする。無垢で淫らな表情が、とても綺麗だと思った。 キスをしながらの俊彦の声に、陸が目を開け、仄かに笑った。 「今、何言ったか分かった」 目を潤ませながら、楽しそうに口端を緩め、陸が言った。 「……うん。凄く可愛い」 もう一度同じ言葉を使うと、陸がはっきりと笑った。 「そうだと思った」 「ああ、可愛い」 「うん、知ってる」 悪戯っぽくそう言って、伸ばした腕を俊彦の首に絡めてきた。 「俊彦は、僕がどんなでも可愛いんだ」 「そうだよ」 「俊彦も可愛いよ……?」 「本当?」 「うん」 お互いに褒め合って笑い、キスを交わした。 両足を持ち、膝を開く。陸は大人しくされるまま、俊彦のすることを見つめていた。 「……入れる?」 「ああ。……いいか?」 俊彦が聞くと、陸は笑い、ずっと待っていた、と言った。 窄まりに先端を宛がい、ゆっくりと押し込める。 「……っ、く」 小さく息を吐きながら、陸がじっと見つめている。膝裏を持ち、高く掲げ、ゆっくりと腰を進めた。柔らかい襞に包まれ、更に奥へと進む。陸の中は温かく、泣きそうなほど気持ちがよかった。 「……は、ぁ……」 陸が大きな溜息を吐く。俊彦を受け入れようと必死に力を抜こうとしているのが分かり、ますます泣きそうになった。 「陸……、陸、陸……」 苦しそうにしながら、だけど陸は目を閉じず、ずっと俊彦を見上げたままだ。どれほど自分が嬉しいかを教えたくて、俊彦も陸を見つめ、陸の名前を呼び続けた。 華奢な身体を目一杯開き、陸が俊彦を受け入れる。進みながら時々止まり、少し引いてから、また進む。やがて最奥まで辿り着くと、お互いに大きな溜息が漏れた。 「……俊彦とピッタリ合わさった」 額に汗を浮かばせ、それでも嬉しそうに陸が言った。 「陸の中にいる。……凄く、嬉しい」 「うん。僕も嬉しい」 引き寄せられ、キスを落とした。身体を揺らす。陸が強く抱いてきた。 「俊彦、気持ちいいか……?」 不安そうな目に、キスで返事をした。吐息と一緒に声が漏れる。それを感じた陸が、「よかった」と言って、キスを返してくれた。 息が合わさる。鼓動が重なる。 陸が目を閉じた。 声が見えなくても何も不安がない。 ゆっくりと二人で揺れながら、混ざり合い、一つに融け合っていくのを感じていた。 |
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