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あの日たち
21

「……んっ……」
 甘い吐息が聞こえ、顔を上げる。
 濡れたような瞳が、俺のすることを見ていた。
 見つめ合いながら、もう一度、今度はもう少し強く噛む。
 は、ぁ、とまた甘く吐かれる吐息に、拒まれる恐怖が薄らいでいく。
 掌に辿り着いた唇で甘噛みし、指を含む。舌で包みながら指先を噛むと、「……あぁ」と、はっきりと官能を示す声が聞こえた。
「……こういうの、好き?」
「……ん」
「痛くされるの、好きなんだ……?」
「ん、……す、き……」
 俺の方がずっと年下なのに、甘えるようにそう答えるのが凄く可愛くて、愛しい。
「弘人さん。ベッド行きたい。……いい?」
 子どものようにコクリと頷き、はにかんだような顔をする弘人さん。可愛い。
 手を繋いで隣の部屋に入る。
 二人ベッドに腰掛け、キスをした。
 そっと触れ合ってから、顎を掴んで顔を傾ける。唇を割って入る舌先を迎え入れられ、奥へと進んでいく。弘人さんは俺にされるまま、大人しく応えている。
「夢みたいだ」
 本当に夢心地でそう言うと、弘人さんはふわ、と笑って「夢じゃないといいね」と言った。
 夢だったら哀しい。
 そう思って、夢じゃないのを確かめるために、彼の顎を軽く噛む。
「っ……ぁ」
 仰け反る首筋に唇を当て、強く吸った。
「……あと付いちゃった」 
 所有の印を指でなぞり、表情を窺う。
「朝起きてまだ付いてたら、夢じゃなかったって分かるから」 
 目立つかな。怒られるかなと覗いた瞳は寛容に笑っていた。
 それに安心して、もう少し大胆に唇を滑らせる。
 カッターシャツのボタンを外し、Tシャツをたくし上げ、胸元にも印を刻んだ。
「あ……ん」
 甘やかな声をもっと聞きたくなる。
 開いたシャツの内側に手を添えて、肩から落とし、Tシャツも首からもぎ取る。本当に子どもの着替えのように、なすがままに脱がされていく弘人さんの肩を抱き、そのままベッドに押し倒した。
 小さな乳首に吸い付いて、舌で転がす。控えめで、だけど少しずつ凝ってくるそれが嬉しくて、何度も何度も可愛がった。
 愛撫を与えながら自分も着ている物を脱いでいった。一旦身体を起こし、弘人さんに跨るような格好のまま、首からシャツを抜くと、弘人さんが熱に浮かされたような目で俺を見上げていた。
 戸惑うように上がってくる腕を引き寄せ、自分の肌に導く。吸い付くような感触が気持ちよくて眼を細めると、彼も同じようなうっとりとした表情を見せてくれた。
 俺の身体を見て欲情している。
 弘人さんも俺を欲しがってくれているという確信が胸を突き、歓喜が湧き上がった。
「弘人さん……好きだ」
 キスをしながら告白する。
「ずっと好きだった。ずっと……こんな風になりたかった」
「うん」
「弘人さんも?」
「うん」
「本当に?」
「うん」
「俺が好き?」
 キスを浴びせながら、何度も気持ちを確かめる。
「……好きだよ」
 聞きたい言葉を引き出して、夢中でその言葉を紡ぎ出す唇に貪り付いた。
「もっかい言って」
「ん……っ、ぅん、……好き、だ」
「ほんと?」
「ぁ、本当、ん、ん、すき……ぁ」
 喘ぎながら、俺のキスに応えてくれた弘人さんは、俺がズボンに手をかけると、初めて戸惑うような顔をした。
「……駄目?」
 こういう時だけ年下を強調して、甘えるようにねだる。
「……したい。ここ、触りたい」
 哀願しながら、そっと布の上を撫でる。
「あ」
 ゆっくりと撫でさすると、みるみる膨れて形を成していくのが嬉しくて、手を止めないまま、もう一度「駄目?」と聞くと、弘人さんは、ふ、と息を吐いて「敵わないなあ」と言った。


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