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雨が止むまで〜意地っ張りの恋〜
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「いいとこって……?」
「ああっ、ああっ、ああっ、あああーーーっ」
 前に教えられたあの場所を目掛けて指先が蠢く。
「待っ……っぁ、かっちゃっ……」
「ああ、ここな」
「やっ、あぁあ、イっちゃうっ、イっちゃう!」
 さっき放った精液で濡れたままのペニスがまたむくむくと膨れてきて、克也の動きに合わせて跳ねている。
「いいぜ。いけよ」
「やぁっ、ああっ……あぁあ」
 克也の腕にしがみつき、やり過ごそうと必死に首を振った。
「我慢すんな。智……いってみせろ」
 低く、甘い声で克也が促してくる。
 すでに二本目が足された指は、智の中で自由に動き回り、はぐらかしもせずに直截に一番感じるところを突いてくる。
「あ……ぁ、あ、あ、あ、あ、あっ」
 指に押されるように声が出て、涙が溢れ出した。
「……智」
 流れる涙を克也の唇が吸い取ってくれた。
「あああああっ」
 ビクン、ビクン、と体を跳ね上げながら到達する。呼吸と一緒に波立つ白い腹に精液が飛び散り、流れ落ちていく。
「……ああ、またイケたな」
 満足そうな克也の声が聞こえ、ぐったりとその胸に凭れた。
 克也に背中を預け、二度目の射精で力の抜けた体を休める。荒かった息が少しずつ整い、波打っていた体も静かになっていく。そんな智の様子を後ろで観察していた克也は、智が落ち着きを取り戻すと、中に入れたままの指をまた動かし始めた。
「……あ、も、も、ぅ、駄目だっ……って」
「なんでだよ」
「死んじゃうよ、俺」
「まだ二回だろ。死ぬか、ばーか」
「やっ……っぁああ、ん」
 三本目が入り込み、掻き回すように動かしながら、またあの場所を指先が掠めてきた。
「あっ、んっんんんあぅ……ぁ」
「ほらな」
 性懲りもなく追い上げられて、敏感になりすぎた体が克也の腕の中で泳ぐように波打った。
「駄目、だめぇ……」
「他のセリフ言えよ」
「や、だって」
「駄目だ駄目だってそればっかり言うな」
 智の体を翻弄しながら、克也が後ろで文句を垂れている。
「言えよ、智。こうして欲しいって」
 耳たぶを軽く噛みながら、克也が促してくる。
「ほら、言え」
「あ……」
「俺に指図できんのは……お前だけだろ」
 智の耳に寄せられた唇が、なんでも言えと囁いてきた。お前の望むことなら、なんでもしてやると、克也が言っている。それができるのは、智だけなのだと言っている。
「……かっちゃん」
「ん?」
「……キス、して」
 智の言葉に克也が従ってくる。首を仰け反らせて降りてくる唇を迎え入れた。
「……もっと」
 啄むようなキスが物足りなくて、体ごと捻って克也の首にしがみつく。
「かっちゃん、もっと……」
 大きく開けた口の中に克也の舌が入り込み、強く吸われながら、絡め合った。
「かっちゃん」
 望んだとおりにキスを貰い、他にはないかと、克也は智の目を覗いてきた。
「……して」
 首を引き寄せて、自分からも求めながら、その先に行きたいとお願いをした。
「セックスしよ」
 智がそう言うと、克也は可笑しそうに笑い「もうしてんじぇねえか」と言った。
 確かに、今、二人がしていることは、まぎれもないセックスだと思う。お互いを求め合う行為は、キスをしただけでも、こんなに気持ちがいい。
「うん。気持ちいい」
「そうか」
「かっちゃん」
「なんだ?」
「でももっとしたい。なあ」
 智の貪欲な懇願に克也はまた笑い、それから分かったというように、首に捕まっている智の頭を撫で、髪の毛にキスをくれた。

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