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雨が止むまで〜意地っ張りの恋〜
27


 智の中でずっと陣取っていた指が抜かれ、ベッドに仰向けに押し倒される。足が大きく上がり、克也の腕に抱えられた。指よりも熱く、大きな肉塊が宛がわれ、ズ、と押し入れられる。
「あっ」
 両腕を伸ばすと、体を差し出され、それに捕まった。
 克也の大きな腰が入り込み、少しずつ少しずつ進んでくる。長身に見合った克也の雄は、指なんかよりもずっと重量感があり、いっぱいに広げられたそこが、押し入ってくるものに引きずられ、今にも裂けそうな恐怖に苛まれた。
「あ……あぁ……」
「智」
 智の恐怖が分かるのか、克也は動きを止め、名前を呼び、宥めてきた。
「大丈夫だ。絶対に無理矢理にはしねえから」
 そこに留まったまま、恐怖が去るのを辛抱強く待ってくれている。
 以前犯されたときには、朦朧としていて、痛みという感覚はなかったが、あのとき押し入ってきた克也は、すぐに力を失い、舌打ちと共に去って行った。今はそれよりも何倍も時間を掛け、それでも力を失っていないことが、嬉しかった。
「かっちゃんの、おっきいから」
「悪ぃな」
 智の言葉に克也は笑い、掴まっていた体が降りてきて、キスをされた。吐く息に合わせ、克也がまた少しだけ進む。智の表情を眺めながら、ゆっくりとゆっくりと、征服されていった。
 ときどき少しだけ眉を寄せ、苦しげな表情を智も眺める。目が合うと、克也は寄せた眉を解き、唇を合わせ、笑う。
 お互いを気遣いながら繋がる行為は、深く温かく、心地いいものだった。
 やがて、奥深くまで克也が辿りついた。首に巻き付いていた智の腕をやさしく解くと、体を起こした克也が緩やかに揺れ始める。
「痛くねえだろ?」
 手を繋ぎながら、克也が聞いてきて、頷く。中を擦らないように揺らされて、それが少しずつ早さを増していった。
「……あ、あ」
 溶け出した智の表情を確かめると、今度はそれを小刻みに出し入れしてくる。深く突き入れては引き、円を描くように回されて、素直にそれについていった。智を見下ろす克也の顔は、仄かに笑みを浮かべている。
「かっちゃん、気持ち、いいか?」
 揺らされながらそう聞くと、克也は歯を見せて笑い「うるせ。黙ってろ」と言った。口ではそんなことを言っているが、智を見つめながら揺れている克也は、とても気持ちが良さそうだ。
 はあ、と息を吐いた克也の動きが変わる。少し引いた腰で、智の感じる場所を小刻みに刺激してきた。
「あ、ああ、っぁ、ぁ、ぁ」
 三度目の絶頂がすぐにもやってくる。
「かっちゃん、また……イク」
 克也の動きに合わせて腰を揺らしながら訴えると、繋いでいた手をベッドに押し付けるようにしながら、克也が体を折ってきた。
「ああ。イッていいぞ。俺も……すぐだ」
 浅い場所で細かく腰を振るわせてくる動きに、背中が浮いた。
「こっちだけで、イケるな」
 一度も触れられることのなかったペニスが、また射精感でいっぱいになる。
「うん、う……んっ、あ、あ、イク、イク……ッ」
 大きく背中を撓らせ、腰を突き出すようにし、克也に全部を委ねる。浅く行き来していた動きが激しいものに代わり、突然、ズン、と奥深くに突き入れられた。
「はっ……あぁあああああっ」
 目の前に閃光が走り、光に飲み込まれる。
「あっ、あっ、やっぁあ、ああっ、あああ」
 さっきとは違う強烈な快感に、見えなくなった目を見開き、狂ったように体を揺らした。
「ああ、ああ、ああ、ああ」
 射精感が止まらない。腰を繰り出して終わらせようとしているのに、新たな快感が奥からやってきて、恐ろしいほどの悦楽に包まれた。
「ああ……すげえな……智」
「……んんああぁっ、ああ、あぁ……ひ、ぃ、ぁあ……っ」
 愉悦の波に翻弄され、克也がそれに合わせて体を揺らしている。
「か……っちゃぁ……ん」
 名前を呼ぶと、握っていた手を強く握り返された。
 グリグリと腰を割り入れられ、足が大きく開かれる。上向いた足を、体で押し上げるようにして高く上げられ、その上からのし掛かるような形で中を抉られた。
「あ、あ、深……ぃ」
 奥深くまで突き入れられ、激しく揺らされる。
「……くっ、締まる……」
 喉を詰めて克也が呟き、二度三度と、大きくグラインドし、最奥に押し込まれたそれが、その場所で止まった。
「ああ……」
 溜息のような声を漏らし、克也が智の中に放つ。温かい感触が中で広がっていった。
「……智」
 荒い呼吸を繰り返しながら、克也が智の首もとに顔を埋めてくる。
「智……智……」
 くぐもった声で名前を呼び、ぎゅっと抱き締めてきた。
 ぐずるような声は、遠い昔、よく聞いていたものだった。智の後を追いかけ、シャツの裾を握り、一緒に怒られて泣いていた頃の克也の声だ。
 その声を聞き、ああ、戻ってきてくれたのだと確信する。突き放し、置き去りにされ、遠くへ行ってしまった克也を取り戻した。
 顔を埋めている頭をしっかりと抱き、智も克也の名前を呼んだ。

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