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明日晴れたら〜ろくでなしの恋
15


「お前ほんとにとんでもねえな。まだイクなよ。指一本しか入ってねえ。こんなじゃ俺が楽しめねえだろうが」
 ぐりぐりと中を広げ、無理矢理に二本目を入れた。
「二本目だ。ちゃんと呑み込め」
「ひぅ、んんんん」
「力入れんなよ」
 収縮する襞をたんねんに広げ、擦り上げ慣らす。唾液だけでは滑りが悪く、なかなか中が解れてこない。克也の指の動きに合わせて揺れるペニスからはとろとろと先走りが流れ出ていた。
「……いいか。イクなよ」
 そう念を押して根本を握っていた手を離すと、せき止められていたものが溢れ出てきた。
「っ、あ、ふぅ、ああ、……はあぁあんんっ」
 ビクビクと体を痙攣させて、イクなというのに智が射精をしている。勢いを止められたそれは、まるで壊れた蛇口のようにチョロチョロと流れ出ていた。
 ち、と舌打ちをして、仕方がないから智のイチモツを握りこみ、忙しく扱いてやる。ビクン、ビクン、と背中を仰け反らせながら、だらしなく足を広げ、自分の腹に白い液体を漏らしていた。
「イクなっつっただろうがよ」
 腹に溜まった精液を手のひらでかき集め、自分の指を濡らすと、もう一度後孔へ突き入れる。
「はぁっ、ぅ」
 射精の余韻で弛緩していた智の体が硬直する。
「まあいいか。一回イッたら少しは保つかな。何度でもイカせてやる。……智」
 聞こえているのかいないのか、目を見開いたまま返事をしない智の顔を覗き、笑って言った。
「お前、ドライって知ってるか?」
 自分の精液でぬめりを増した中に、すぐさま二本目の指を入れ、かき回しながらもう一度智の狂う場所を刺激した。
「あ、あ、あ」
「ここ押すと、何回でもイケるんだぜ? 知ってたか? ん?」
 三本目の指を足し、バラバラに中を動かす。
「三本目、入ったぞ。気持ちいいか?」
 出し切って力を失っていた智の前が、揺れながらまた勃ち上がってきた。
「お、早ぇな。またイキそうになってんじゃんよ」
 性懲りもなく先端を濡らしている智に、からかうような声を浴びせ、いたぶり続けた。
「あぁあああああっ」
 かき回し、刺激し、執拗にそこを責める。完全に立ち上がった智のペニスが大きく跳ね、腰もいやらしく蠢いている。
 絶頂の兆しを示して、智が声を上げる。大きく足を開き、しゃくるように腰を動かし、口からは唾液が滴っていた。何かを探すように手が上がり、彷徨っている。普段ならそこに自分を差し出すのだが、今日はそれをしなかった。
 智の足の間を陣取り、弄びながら、その様子を上から醒めた目で眺め続けた。
 自慰の延長なら愛撫もキスもいらないんだろう。ただひたすら絶頂へ導くためだけに、刺激し続ければいいだけだ。
 空を彷徨っていた智の腕が、やがて諦めたようにパタリと落ち、代わりにシーツを掴んだ。さっき女と抱き合ったシーツをきつく握り、引き寄せている。
「ああ、ああ、ああ」
 快楽に流されている智は、もう克也の名前も呼ばない。誰と何をしているのかもどうでもいいのかもしれない。
「ひ、ぁ、ひっ、ひ、ぃんっ………あああああああ」
 一際大きな声を上げ、智の背中が弓なりに撓った。広げた足のつま先がピンと反る。
「ああ。またイッたのか。性懲りもねえな。まだだ」
 突き入れた三本の指で、休むことを許さず動かし続けた。
「あぁー、んんんうぅ、うっ、あぅっ、ああ、あ、あ、あ、あ、あぁ」
 何度も絶頂に到達し、その度にかき回して追い上げてやる。意識を失いそうになると、強くペニスを扱き、呼び覚まし、いたぶった。
 何度もやらせろ、尻を貸せと言っていた。それが目の前に差し出されているのに、克也の股間は一向に反応しない。智の中で指を動かしながら、自分の前も寛げ、性器だけを取り出す。くたりと力のないそれを扱き上げ、無理矢理に奮い立たせる。
 なんの抵抗もしない智の体から指を抜き、代わりに自分のモノを宛がう。ズ、と埋め込むと、あ、と小さく智が声を上げた。先端を埋め、しばらく馴染むのを待った後、ゆっくりと根本まで押し入れていった。
 充分に解された中は温かく、急になくなった指の代わりを待っていたかのように、やわやわと包み込んできた。
「……ああ。やっぱり……」
 しばらくは大人しくそこに留まり、やがて少しずつ動かしていく。ぐじゅ、ぐじゅ、と中の液体が音を立て、吸い付くように絡まってくる。
「……ぜんぜん、よくねえや」
 さんざん弄ばれ、イカされまくり、疲れ果てた智は、されるまま死体のように動かない。
 思った通りだった。こんな風に犯しても、何も感じない。気持ちよくもなく、楽しくもない。今まで抱き合ってきた人間と同じ、なにも起こらなかった。これならば、自分一人で慰めていたほうがよっぽどましだ。
 数回の抽挿を繰り返し、もういいやと思い、出ていった。無理矢理に興奮させた克也のモノは、すでに力を失っていた。
「……つまんねえの」
 くつろげていた前を仕舞い、その場にしばらく座り込んだままでいた。智は相変わらず死体のように横たわっている。
 外は雨が止む様子もなく、周りの喧噪も雨の音に吸い込まれているのか、妙に静かだ。
 台所に行き、煙草を取り出す。シンクの中にはさっき投げ入れたビール缶が中身を零しながら転がっていた。流れ出ている液体の上に押しつけると、ジュ、と音を立てて煙草が溶けていった。
 髪を掻き上げ、換気扇を回す。ゴゥ、という音だけが、静かな部屋の中に響いていた。
 居間にしている部屋に戻り、身の回りのものだけをポケットにねじ込む。寝室に足を向けると、智はまだそこに寝ていた。
「ダチんとこに行くから。鍵はかけなくていい」
 智から取り上げた鍵は、克也のものと一緒にポケットに入っている。泥棒が入るとも思えなかったし、入ったところでどうでもいい。
「もう二度と来るなよ」
 言わなくても、こいつも来たいとは思わないだろう。
 振り回されるのは、二度とご免だ。

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