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明日晴れたら〜ろくでなしの恋
3


 完全に油断していた。脇から伸びた手は、克也のイチモツを掴んだままゆるゆると動いている。
「……おい」
 低い声を出すと、手の持ち主が後ろで「へへへ」と笑った。
「なんのつもりだ」
「こういうつもり」
 握り込んだ手を上下に動かし、もう片方の手が、克也の胸をまさぐっている。
「……俺ぁ疲れてるんだよ」
「まあまあ、いいじゃん」
「明日五時起きなんだって」
「すぐ終わるから」
「帰れよ」
「えー、泊めてよ。今からだとバス終わってるし」
 智の住まいは東京の二十三区外にある。都内の大学に通い、遊び場をこっちに移した智は、克也の部屋をホテル代わりに使うのだ。
「駅からタクシー使えばいいだろ」
「金ねえもん。三十円しか持ってない」
 またかよ。と、溜息が漏れた。
「時計買っちゃってさ。バイト代入るの月末だし。かっちゃん金貸して?」
 どうせそんなこったろうと思ったと、呆れている克也にお構いなく、智の手が忙しく動いている。
「サービスするからさあ」
「いらねえよ。やめろって」
「やだ」
「おら、やめろっつってんだろうが」
「だって、腹いっぱいになったら、なんかやらしいことしたくなっちゃったんだもんよ」
 一向に興奮の兆しを見せない克也のイチモツを握り込み動かしながら、太腿の辺りに自分のイチモツを擦りつけている。頭一つ分も低い智はここまでしか届かない。
「ちょ、かがんでよ、かっちゃん」
「やなこった」
「ちょっとだけだって」
「一人ですりゃいいじゃねえか」
「えー、せっかくかっちゃんがいるのに。使わせてよ」
 ふざけんな。
 握っている手を引き剥がそうとしたら、さらに強く握り込まれて悲鳴が上がった。
「ぅおいっ。潰れるって。なにすんだよっ」
「かっちゃん、なあ。ちょっとでいいから」
 背中にかかる息が熱い。完全に発情してやがる。
「……しょうがねえなあ」
 胸をまさぐっている腕を引き、体を入れ替えた。向かい合って立つ智は、興奮しきった瞳を潤ませ、とんでもなく淫乱な顔で克也を見上げた。
「あ……」
 腰を持ち上げながら自分も膝を折り、智を抱え上げるような態勢を取る。お互いのペニスを擦りつけるようにして揺らすと、智は「はあぁあ……」と、溜息のような声を上げた。
「ほら、自分で握れ」
 両手で智の腰を支えながらそう言うと、智は「こうじゃなくて」と、文句を言ってきた。
「後ろから。後ろから触ってよ」
 藻掻くようにして克也の手から逃れ、自ら背中を向け壁に手を付いている。どんなときでもマイペースな智は、こういうときでも我が儘放題、鬼のように自分本位だった。さっき智がしたように、前に回した手で智のペニスを扱き上げる。
「あぁ……。あ、あ、かっちゃん、胸も触って」
 喘ぎながら注文を付け、ひたすら自分の快楽に没頭している。克也の存在はガン無視だった。
「……そこ、キュって……してっ……ぁっ」
 注文通りに乳首を摘み、コリコリとこね回すと智の顔が弾けるようにして上がった。
「あ、ふぁ……ぁあん、んん、ああんっ」
 あられもなく声を上げ、克也の動きに合わせ腰を揺らす。耳を舐め、乳首を転がし、ペニスを弄ってやる。
「あぁあああん。そ……こ、そこ、そこ、あ、あ」
「ここか?」
 括れの下のあたりをゆっくりと撫で上げる。
「ああっ、もっと、ぐりって、ぐりぐりってして、ぇ」
 手の中のものを行き来させながら、腰を振り立てて智がねだってきた。
「あ……かっちゃん、ぃい、そこ、いい、あぁ、ああ」
 反り返り、克也の胸に凭れるようにして体を揺らし、フィニッシュに向おうとしている。
「もうイくのか?」
「イク、イ、ク、イクイクイク、あああぁああっ」
 智の声に合わせ、早い動きで扱き上げ、口に全部含んだ耳を音を立てて吸う。尖った乳首を心持ち強く摘み上げ、左右に揺らしてやると、開けっ放しの口元から唾液が滴り落ちた。
「……あぁ、ああ、ああ、ああ、……っ、ぁぁああ」
 揺れていた動きが止まり、一瞬硬直したのち、ぶるっとした震えが克也の胸に伝わってきた。握り込んでいたものの先端から白濁が迸る。射精にあわせて手を動かすと、智は「ん、ん」とその度に小さく声を上げた。
 やがて、はふぅ、と、大きな溜息を吐いて、智の体が克也から離れていく。そしてそのまま風呂場から出て行こうとしていた。

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