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明日晴れたら〜ろくでなしの恋
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「……おい」
「ああ〜。気持ちよかった」
「自分だけかよっ」
「えー。かっちゃん『俺はいい』って言ったじゃん」
「てめえ……」
 あまりの仕打ちに二の句が継げない。
 自分本位なやつだとは知っていた。生まれたときから知っていた。我が儘で打たれ弱く、己の欲求に忠実で馬鹿なのも十分知ってはいたが、ここまで非道な人間だったとは。
 出ていこうとする腕を乱暴に?み、さっきと同じ態勢に持ち込む。
「俺もうできねえよ」と文句を言っている智を無視し、壁に手を付かせ、腰を掴み、ガッチリ固定した。
「ちょ、なに?」
 振り返ろうとする首根っこを押さえつけ、低くさせた態勢の後ろに指を宛がう。
「ちょ、ちょ、かっちゃん、なにっ?」
「入れる」
 ええっ、と智が素っ頓狂な声を上げた。
「入れるって」
「入れさせろ」
「ちょ、やだよ」
「いいじゃねえか」
「よくねえって!」
 腰を捻って指を回避しようとするのをまた押さえて狙いを定めるが、智が暴れるからどうにもうまくいかない。
「おら、大人しくしろって」
「やだよ。いきなりなに言ってんの?」
「ここに穴がある」
「ちょ、なんだよそれ」
「穴があれば男は入れたいと思うもんだ」
「なにそこに山があるからみたいなこと言ってんの? ちょっと格好いいとか思っちゃうだろ!」
「じゃあ思っとけ。俺は入れる」
「やめろよ」
「てめえ、自分ばっかりいい思いしやがって。サービスするっつっただろうが。入れさせろ」
「ここは、そういうためにあるもんじゃないって!」
「大丈夫だ」
「大丈夫じゃないってばっ」
 狭い浴室で男二人の怒号がぎゃんぎゃん響き渡る。
「……どうしても嫌だっつうんだな」
「そりゃそうだよ」
「お前最低だな」
「かっちゃん」
「分かってはいたんだよ。最低最悪だってよ」
「なんだよ。酷いじゃないか」
「酷いのはお前だ」
 しょうがねえなあと、溜息を吐いて、「じゃあ、口でやってやるよ」と、さも面倒臭そうに智が言った。
「溜まってんのか?」
 お前に言われたかねえな、と思いながら興奮と腹立ちで半分勃ち上がっているモノを眺めている智の顎を掴んだ。力ずくで持って来た顎に自分も被さり合わさる寸前で、またもや暴れられる。
「ちょっ、キスは、キスは勘弁」
「……おめえ、フェラはよくてキスは駄目って。どこぞの風俗嬢か?」
 無理矢理押し付けたら素早く顔を背けられ、ブンブンと首を振り回している。
「ここは、これはマリコちゃんのものだからっ」
「マリコちゃん? 誰だそれは。リサちゃんじゃなかったのかよ」
 大学の同級生だかサークルの仲間だか、ついこの間まで騒いでいた女の名前はマリコではなかった。
「今はマリコちゃん一筋だ」
「リサには振られたのか」
「違う! マリコちゃんが好きなんだ。今度こそ運命の出会いだ」
「そりゃよかったな。お前の大学には運命の出会いがたくさんあっていいことだな」
「マリコちゃんはそんなチャラチャラした女じゃない。大人の女性だ」
「ほう」
「時計の販売員をしているんだ」
「お前……」
 それでマリコちゃんの売り上げに貢献して有り金全部をつぎ込んで、克也の部屋の前に転がっていたわけか。
 本当にこいつは……。
 今までどれだけ痛い目に遭っても全然懲りない。失敗をしては立ち直り、すぐさま新しい失敗を繰り返す。
 どんだけ馬鹿なのか。
「だからフェラで勘弁しろ。な」
 おら、と不遜な態度で跪かれ、そこまでしてやってもらわなくても結構だとこっちも意地になった。
「もういいよ。あっちいけ」
「なんだよ。やってやるって言ってんだろ?」
「ふざけろよ。そんな粗末な口に入れたかないな」
「なんだよ失礼すぎだな」
 どっちがだと思うが、もう口論する気にもならない。
「……もういいよ。疲れた」
「せっかくサービスしてやろうって言ってんのに。遠慮すんな?」
「いいから。あっち行け」
 乱暴に腕を引っ掴み、風呂場から放り出した。

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