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明るいほうへ
30

 交替でシャワーを浴びることになった。「一緒に入る」と言われたけれど、丁寧にお断りした。
 一緒に風呂に入ったりしたら、きっとまたいいように体を弄ばれて、事に至る前に果ててしまいそうだ。
 遠藤君もそれは困るとみえて、割にあっさりと引き下がってくれた。
 俺が先にシャワーを使っている間、コンビニに買い物に行ってくると遠藤君は出かけて行った。
 コンドームなんか当然用意していなかったし、その他にも準備がいるから。
 まさか、変な道具なんか買ってきやしないかと一瞬心配になって、コンビニにそんなものが売っているはずがないじゃないかと気が付いた。ああ、俺って本当に、どこまで……馬鹿なんだろう。
 風呂から出て、帰りを待っている間に、一間しかない部屋に布団を敷いた。やる気まんまんみたいでどうかとは思ったが、実際やる気満々なのだから、仕方がない。
 なかなか帰ってこない遠藤君を待っているうちに、不安になった。もしかしたら気が変って帰ってしまったんだろうか。コンビニはすぐ近くなのに。
 蒲団の上に正座したまま待っていた。ようやく帰って来てくれた彼の顔を見たら、また涙が出た。
 俺の涙をみて驚いた遠藤君は、ちょっと先のスーパーまで行って、泊まるつもりで着替えを買っていたのだと説明してくれた。
 不安にさせてごめんなさいと抱き締めてくれて、それから「泊ってもいいですか?」と今更に聞いてくるから、ああ、遠藤君も不安なのだと気が付いた。
 もちろん泊っていって欲しいと抱き締め返す。我ながらあっぱれなバカップル振りだ。
 シャワーから上がった遠藤君がバスタオル一枚を腰に巻いて戻ってきた。俺は潔く全部脱いで布団の中で待機していた。
「脱いじゃったの?」
 ちょっと残念そうに言われた。
「うん。着てた方がよかった?」
「うーん、恥ずかしがるのを一枚一枚剥いていくのも楽しいかなって思ってました」
「そういうシチュエーションが好きなんだ?……着なおそうか?」
 あははっと遠藤君が明るく笑った。とてもこれからセックスを致そうというような雰囲気じゃない。
「それはまた今度。ほんと、困った人だなあ」
 なおも楽しそうに笑う顔を見て、俺も笑った。
 遠藤君が布団の中に入ってきて、お互いに笑ったままキスをした。ちゅっ、ちゅっ、と啄ばむようにして戯れるのが心地よかった。
 組み敷かれて見下ろされる瞳を不思議な気持ちで眺めた。幾度も夢見て、想像した遠藤君が今実在して俺の上で見つめ返してくれている。切なそうに、愛しげに見つめられて、じわじわと幸福感が広がっていく。
 体中余すところなくキスを受けて、とろとろに溶かされた。
 太くてやさしい指が濡れた狭間に入ってくる。同時に前の屹立を口に含まれて、細くあえかな悲鳴を上げた。
 慎重に少しずつ慣らされていく。決して俺を傷つけまいと、ゆっくりと、ゆっくりと広げながら進めていく。
「あ……あっ、え、んどう、くん……ぁ、ま、まだ? もう……」
「まだ、もう少し我慢して。このままじゃ、たぶん痛い」
 痛くても構わない。早く欲しいのに、優しい遠藤君はまだだと言って与えてくれない。
 二本だった指が三本に増やされて、中で蠢く。内側の浅い所を擦られたとき、何かが中で弾けるような衝撃を感じた。
「あっ……あっ……あぁっ!」
「ミツル?」
「そこ……だめっ、あっ、あっ、へんっ、へんになる……ああ!」
 すっと、遠藤君の唇が離れ、急に快楽から突き放されたようになって戦慄く。
「いやっ、いやだっ、やめ、ないでっ」
 あられもなく腰を浮かせてねだる。イキたい。
「ごめん、もうちょっとだけ、我慢して」
「いやだぁ……あ、もう、いきたい……い、いかせて……ぇ」
「いい子だから……今イクと、あとがつらいから、ね?」
 宥められて、息を整えようと深呼吸を繰り返す。「つらいね」「ごめんね」と繰り返す遠藤君もつらそうだ。
「も……きて、遠藤く……は、やく……」
 もう限界だった。
 遠藤君は体を起こすとコンドームに手を伸ばした。「すぐだから……」と言う声が掠れている。彼も俺が欲しくて堪らないのだと思うと嬉しかった。



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