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仰げば蒼し |
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久しぶりの一人の週末を、こまごまとした家事を片付けて過ごした。 ここ最近は週末というと、遠藤君の部屋に入り浸りだったから、いろいろやることが出てきた。 夏の盛りも過ぎ、そろそろ冬物の用意もしなけらばいけない。クリーニングを出したり、洗濯機を回したり、そうしながら、そんなことをしている自分を新鮮に感じたりして、不思議な感覚を味わっていた 慣れって本当に恐ろしいと思う。 二人で週末を過ごすようになって、まだ半年くらいなものなのに、前はどうしていたっけと考え込むほどに、一人でいたのが遠い記憶となっている。 溜まった洗濯物を干しながら、ああ、天気がいいなあって空を見上げて、遠藤君のことを思った。 今頃明日の試合に向けて、練習をしていることだろう。 先発はダイ君だろうか。あの新しい子は馴染んだのかな。 遠藤君をコーチに迎えて、どんどん実力をつけているチームだ。明日勝てなくても、いつか勝てる日を夢見て、大声を上げて頑張っていることだろう。 メールがあるかもしれないと待ってみたけれど、遠藤君からは連絡が来なかった。 練習に忙しいのか。それともまだ気にしているのか。 昨日の態度は、俺も少しきつすぎたかな、なんて反省している。言い争った後、すぐに帰れだなんて言われて、遠藤君も傷付いただろうと思う。 言葉が足りなくて誤解されるのが嫌だと言って、俺になんでも言えという遠藤君こそ、言わないでいることがあるじゃないかと、あのとき思った。 俺は、遠藤君が俺の過ちをなんてことないことだって言われたことを鵜呑みにし、忘れろといわれたまま、素直に忘れていた。 だけど、昨日の遠藤君の態度を見れば、決してそんなことを思っていた訳じゃないことが分かってしまった。遠藤君は気にしている。 言えばいいのに、と思って、でも言われてもどうしようもないことだから、彼もきっと言わなかったんだろうなと納得した。 飲み会での態度や、帰ってきてからの会話を思い出し、あのときちゃんと話し合っていればよかったなと後悔する。 試合の前なのに、遠藤君は嫌な思いをしただろう。俺だってそうだ。 ただ、昨日のあの状況では、俺も気が立っていて、冷静な話し合いは出来ないだろうと思ったのだ。 明日、試合を観に行って、勝っても負けても、頑張ったねってみんなを労おう。 それからいつまでも嫌な気分を引きずらないために、話し合いをしようと決め、明日も晴れてくれよと、空を見上げた。 |
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