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仰げば蒼し |
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「なかなか有望なんじゃないの? 弱小ファイターズ」 賛辞の言葉が狭い室内で反響する。 金曜の夜からずっと一緒にいるのに、今日もまた性懲りもなく遠藤君の家へと連れてこられた。 砂埃ですすけてしまった体を洗い流そうと、風呂場に引きずりこまれている。 二人して立ったままシャワーを浴びて、今は遠藤君が後ろから俺の頭を洗ってくれていた。 「うーん、人数が増えて、ちょっと複雑なことになってるんですよ」 「……ナオキ、君?」 お湯でシャンプーを流しながらゆっくりと遠藤君が体を撫でる。 「ああ、見てました?」 「いい感じなんじゃない? まだちょっと馴染めてないけど、あれなら即戦力になりそうだし」 「そうなんですけどね」 シャンプーがきれいに落ちたのを確認して、今度は手にボディソープをつけて体を洗い始める。 「ダイがいるでしょ?」 ダイ君は今のところのエースピッチャーだ。五年生のダイ君はガキ大将気質らしく、ピッチングもダイナミックで体中使って投げ込む球は勢いがあるが、コントロールがない。真中に投げようとすると今度は棒玉の打ちごろになってしまう。 「……ダイ君が……ごねてるの?」 「まあ、ごねてるっていうか、あれは周りが気を使っているっていうか、あとから来た奴にとられるのが気に喰わないっていうか」 石鹸の付いた手がするすると胸と下腹部のあたりを洗っている。 「両方使え……ば、いいじゃない、か。勢いのダイ君を先発にして、押さえ……に」 「そうなんですけどね。交代すると、守備の雰囲気まで変わるんですよ」 「あっ……、そうなの?」 「ダイはあの通りだから、ガンガンやって頑張ろうって引っ張って、多少のミスをしても周りもフォローしてやろうっていう気が起きるんでしょうね。打たれても守ってやるって。まあ、ホームラン打たれたらしょうがない、次の回で取り返そうとか」 「……んっ……ぁん」 口の動きと手の動きが別々だから、どっちに集中していいのかわからない。 「でもナオキの時は、みんな緊張してるっていうか、ナオキもナオキで打たれたら、『僕が打たれてしまってすみません』みたいな感じで、あいつ、一人でやってるんですよね……って、聞いてる?」 「ん……ん……あっ……」 聞いているけど返事が出来ないんですけど。 「だからね、使い方に気を遣うんですよ」 言いながら顔だけ振り向かされてキスをされた。 「あ……んん……ぁ……ぁ」 「……どう思います?」 舌を嬲られながら乳首をキュっと抓まれて、崩れ落ちそうになる体を掬うように支えられる。 「……ぁ……あんっ」 「今日は……反応がいいですね……」 「……だっ……て……ぁ」 今日一日、遠藤君の凛々しい姿を堪能していた俺は、部屋に戻った時にはすでにもう、出来上がっていたから。 「ベッド行く?」 「あっ……あっ……」 「どうする? 明日仕事だから……このまま終わらせてもいいですよ」 昨日も一昨日も、さんざん愛し合ったから、今日はそれでもいいと遠藤君は俺にどうするのか委ねてきた。 でも……それは、ずるいよ遠藤君。そんなの、決まっているじゃないか。 「やだ……」 「なにが? ベッド行くのが嫌なの? このまま……いく?」 石鹸でぬるついた指が俺の敏感になった欲望を包んできてゆっくりと擦りあげた。 「ああっ、い、いやっ、やだ……」 「充のいやは信用できないからな」 小さく笑ってなおも責めようとするから、身を捩って抵抗したのに、なんなく捕まえられて、悪戯された。 「どうする? ベッド行く?……ほら」 「っあ、ぁあ、んんぅ……んっ」 遠藤くんの指に翻弄されて、いいように声が上がる。 「……このまま……あっ……ここで、して……」 もっとちゃんとしてもらいたいし、かといって今突き放されるのも切ない。 俺の提案に遠藤君が驚いた。ここで繋がりたいと俺が言い出すとは思っていなかったみたいだ。 「……だめだよ。ここじゃあ、充がよくなれない」 狭い浴室で無理に繋がろうとすると必ずどこかが壁や床に当たって俺が痛いという。遠藤君は少しでも俺に痛い思いをさせたくないといつでも気遣ってくれているのだ。 「いやだ……いま、ここで……して」 壁に手をついて自ら受け入れる態勢をとる。 「ミツル……」 下から腕を回して抱え込むようにすると、後の狭間に指が入ってきた。 「あっ……」 「自分で支えられる?」 コクコクと頷いて、壁に付いた腕に力を込めて体を支える。俺の体制が安定したのを確かめてから、前を掴んでいた掌が後と一緒に動き出した。 「我慢しないでイっていいから……」 「いやだ…………あっ……いかな、い……遠藤君、の……で……ぁ」 遠藤君は俺を早く楽にさせようと責め立てた。首を振りながら押し寄せる波に逆らってはぐらかそうと歯を食いしばった。 「んんっ!」 「ミツル、ほら……」 促されても首を振る。遠藤君の呼吸もだんだんと激しくなってきた。早く……痛くてもかまわないから……。 「は、やく……も、大丈夫……だから……」 指が抜かれて代わりに遠藤君の固い肉塊が宛がわれた。 「……痛かったら、言って」 「ん、ん」 腰に手を添えられて、二、三度 軽く突いて確かめてから、グイっと入ってきた。 「あっ……」 こじ開けられる感覚に思わず仰け反る。 痛みはそれほど感じなかった。幾度も体を重ねているうちに、俺の体は遠藤君を受け入れやすくなっていた。ゆっくりと道をつけるように抜き差しを繰り返しながら進んでくる。 「あ……っ、あっ、え、んどうくん……あっ、あっ」 「大丈夫? 痛くない?」 快楽に掠れた声でそれでも俺のことを労わってくれる。 「ん……っ、平気……奥……っ、まで、きて……」 「すごい……わかる? ミツル」 遠藤君も俺の体が柔らかくなっていることがわかるみたいだ。 「んっ、んっ」 はやく最奥までたどり着いてほしいのに、遠藤君は浅い場所で俺が喜ぶことを知っているから、なかなか来てくれない。だけど今はそこよりももっと深い所に来てほしい。なんだか体の奥のほうから何かがくるような気がするのだ。 もどかしくなって自分から腰を突き出して、奥深くまで受け入れた。 「あっ」と遠藤君が呻いた。 大きく腰をグラインドさせて、動いてほしいと促す。 「ミツル……ミツルっ」 激しく動き出した遠藤君に合わせて体を揺らす。 「はっ……ぁあんっ……あんっ、あぁっ、あぁっ」 俺の内側から何か光のようなものがやってきた。そちらへ向かって素直に流されていく。 「あっ……っ、あ……っ、えん、どうくん、……っ、あ……っっ……!」 光が目の前に広がった。最後は声も出なかった。顎が上がり、開いたままの唇から唾液が滴り落ち、反り返った背中が大きく震えた。 「……っ……っ、は……ぁ」 イク瞬間に物凄い力で締め付けてしまったらしい。腰に添えられていた遠藤くんの指が食い込んだ。 「うっ、あ……っ、ミツル! あっ……」 一度深く突き上げて、突然ズルっと一気に引き抜かれた。 「あぁっ!」 背中に温かいものがかかった。後で荒く息をつく音が聞こえる。 しばらくは二人とも口がきけなかった。黙ったまま呼吸が収まるのを待って、ゆっくりと体を起こした。 「……びっくりした。間に合わないかと思った」 やっぱり心肺能力の差なのか、遠藤君の方が先に立ち直ってきて、シャワーで洗い流してくれた。 俺はその場にへたり込みたかったが、遠藤君が体を抱えるようにして立たせてくれている。 「大丈夫?」 「……ん、ちょっと、大丈夫じゃないかも……」 足に力が入らない俺はそのまま遠藤君に抱えられて、タオルにぞんざいにくるまれたまま部屋へと連れて行かれた。座らされて、体を拭かれる。遠藤君自身は濡れたままだ。 「あ、遠藤君、床が濡れるから」 自分でやるからとタオルを受けとろうとしても「いいから」と拭いてくれて、そうしながらまたギュッと抱きつかれるものだから、せっかく拭いた体がまた濡れてしまった。 「また濡れちゃったよ……」と文句を言ったら乱暴に顔を掴まれて思いっきり唇を吸われた。 「んんぅーっ」 限界まで吸いつかれて、離れる瞬間には「んぱっ!」と大きな音がした。 また抱きしめられて、キスされて、なんだかおもちゃみたいにやりたい放題に扱われている。 遠藤君がひどく喜んでいるのがわかったから、大人しくされるままにしていたけど。 |
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