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さよならの前に君に伝えたかったこと |
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「なんか行きたい学部でもあんの? そっち系」 「さあ。あるんじゃね?」 「なんだそれは」 「別に。行けそうなところを漁ったらその辺かなって感じ?」 「でもあるんだろ? やりたいこととか」 「さあ。別に」 「お前さあ、それやめとけ」 「なにが?」 「その『別に』っていう口癖」 喉を鳴らして水を飲み干した圭吾が俺に説教をしてきた。 「は?」 「『別に』『別に』って。投げやりに聞こえる」 「投げやりなんだからしょうがねえだろ」 「なんでだよ」 別に。 言おうと思った言葉を飲み込んで、ムッとしたまま黙っている俺を、圭吾が見ている。 「行きたいと思ったんだろ? 北海道とか長野とか」 行きたいと思ったわけじゃない。 ここから出たいと思っているだけだ。 「なんかきっかけがあるんだろ」 大した理由なんかない。 北海道はテレビで観た風景が目に残っただけだ。長野だってなんかの写真で見た山が綺麗で、あんなところに立ったら気持ちいいだろうなって、ただ漠然とそう考えただけだ。 ムッとしたまま黙り込んでいる俺のコップに水を注ぎながら、圭吾はなおも説教を続けようとする。 「投げやりとか言うなよ」 「は? あんたが言ったんだろう。そう聞こえるって」 「お前も『そうだ。投げやりだ』って今言ったんだろうが」 注がれた水にちらっと視線を寄せて、プイと横を向いた俺に圭吾が笑ったからまたムッとした。 「何笑ってんだよ」 「ガキみてえ」 「ガキだよ。悪かったな、ふざけんな」 俺の答えに今度はピッチャーを持ったままクツクツと肩を振るわせて笑っている。 「投げやりなんかじゃないだろ?」 「なにが」 「部活だって頑張ってるし」 「頑張ってねえよ!」 「辞めないでちゃんとやってるじゃないか。俺、お前がすぐに辞めるかと思ってた」 「それは心外だな」 「そうだな。悪い。みくびってた」 笑いながら謝られても、全然謝られた気がしないから、俺はムッとしたまま乱暴に水を飲んだ。 俺の不機嫌なんかどこ吹く風で、圭吾は余裕の笑みなんかを浮かべている。 マジむかつく。 「本当、バスケやってみたいって言ってきたときも驚いたけど、こいつ続くかなって思ってた」 「悪かったな、ご期待に添えなくて」 「そんなことないよ。嬉しいよ。教え子が一生懸命やってるのを見るのは」 「はあ? 教え子って何言っちゃってんの? たかが教生のくせして偉そうに」 「本当だな」 あはは、と圭吾が楽しそうに笑って、俺は怒りの引っ込みがつかなくなって、やたらと水を飲むしかなかった。 |
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