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さよならの前に君に伝えたかったこと
46

 俺の背中に腹をくっつけるようにして、圭吾が寝ている。俺より一回り大きい圭吾は、横になって俺に被さるようになっていて、まるでパズルみたいに合わさっている。
 動くと肘とか足とかが当たるから、なるべく動かないように丸くなる。疲れてすぐ眠れるかと思っても、なんか体が硬直してうまくリラックス出来なかった。
 でも動くと圭吾が煩いだろうと思い、我慢する。鼻の横が急に痒くなって、そうっと掻いたりして、足の裏に汗をかいてしまった。
 今度は髪がかかっている耳の後ろが痒くなってしまい、もぞもぞと枕に擦る。そしたら反対側もなんだか気になってやっぱりそうっと髪をかき上げたら、後ろで圭吾が吹き出した。
 笑っている振動が背中に伝わる。
「お前、落ち着きねえな」
「うるさい。早く寝ろ」
「眠れないよ」
「我慢して寝ろ」
「孝介」
「なんだよ」
 伸びてきた腕が俺の頭を撫でてきた。
 しばらく俺の髪をいじっていた掌が、ゆっくりと降りてくる。頬を撫で、大きな掌で俺の顎を掴み、そのまま引きよせられた。
「……眠れない」
 頑なに壁を向いていた俺の体が仰向けになる。顎を掴んだまま、圭吾が体を起こした。
 暗がりの中で、圭吾が見つめてくる。降りてきた唇を、少しだけ開いたまま受け止めた。
「……ん」
 軽く合わさり、開いたままの唇の裏に、圭吾の舌が当たる。遠慮がちに入り口付近を撫でている舌に、自分のそれを差し出すと、誘われるように絡めてきた。
 軽く吸われ、また絡めてくる。
 横になった状態で体を斜めに起こしている圭吾の首に捕まって引き寄せる。体を起こした圭吾が、完全に俺の上に被さってきた。
「……いいか?」
 俺の目を覗いた圭吾が聞いてくる。
 ほら。またそうやって俺に聞く。
 いいか、って聞かれて、はいどうぞ、って俺が言う性格かどうか、いい加減分かってると思うのに、なんでそうやっていつも聞いてくるんだよ。
「駄目だっつったらやめんのかよ」
 そう答えてやったら、圭吾は、ふ、って笑って「まったくお前は可愛くないな」って言った。
「どうせ……」
 また悪態を吐こうとした口を塞がれた。
 体重をかけないように肘を付き、俺の舌を吸っていた唇がずれ、首筋に当たる。俺が首を仰け反らせると、顔を斜めにして薄い皮膚に吸い付いてきた。
「……ぁ」
「……止めねえぞ」
 首筋に舌を這わせ、反対側にも顔を寄せ、もう一度強く吸い付きながら、圭吾が低い声を出した。
 完全に俺の真上に来ている圭吾は、俺の頭を撫で、またキスをして、空いている方の手をシャツの下から潜り込ませてきた。
 腹の辺りを撫で、シャツをたくし上げながら上にのぼってくる。胸までのぼってきた指が、胸の先端に辿りつき、指先でサラサラと撫でられた。
 は、ぁ、と小さく溜息を吐いたら、今度は指先で引っ掻き、次には親指と人差し指で軽く摘んできた。刺激で固くなった粒を小さく揺さぶられる。
「っ……ん」
 なんとか声を殺そうと、口に肘を当て、強く押し付ける。
 俺の腹に跨るようにして上にきた圭吾は、両手で俺のシャツをたくし上げてきた。
 寝たままバンザイをさせられて、首からシャツを抜き取られた。両手で俺の肌を撫で、俺が自分の口元に腕を持っていくと、それを取り上げてシーツに押し付けながら、低く沈んできた。
 胸元に降りてきた唇が、俺の乳首に吸い付く。口を塞ぐ腕を取り上げられ、俺は唇を噛んで声が漏れるのを防いだ。
 吸い付いたまま舌先で先端をペロペロと舐められ、ピクン、と体が跳ねる。チュ、と音を立てて離れると、尖らせた舌先でツンツンと突かれ、その度にビクビクと体が跳ねた。
 何度も同じことを繰り返され、俺は声が出そうになるのを、首を振って必死に堪えた。
 胸に当たっていた唇が下の方へと滑り、柔らかい脇腹を撫でたかと思ったら、いきなり噛みつかれた。
「ああっ」
 突然の痛みに思わず声を上げると、今度はそこをペロペロと舐めてきた。軽く噛み、舐め、吸い付き、そうしながらまた胸に辿りついた唇が先端を挟み込む。
「あっ、……っ、ぁ、っ」
 一旦声が出てしまったら、抑えようと思っても勝手に出てしまい、俺は慌てた。
「け……ご、待っ……あっ、やめっ……」
「やめない」
 動こうとする腕を強い力で押さえ込まれ、胸を弄られる。首を振って唇を噛むと、また噛みつかれて声が上がった。


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