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さよならの前に君に伝えたかったこと
50

「孝介」
「ん……?」
 おでこから目の端、頬、顎へと唇を滑らせながら、圭吾が俺を呼ぶ。
 俺自身はイってないけど、なんだか満足して、目を閉じてそれを受け止めながら返事をした。
「なんか……まだいけそう、っていうか……」
「あ?」
「全然足りない」
 俺の中を占領したまま、圭吾が「もっかいい、いいか?」って聞いてきた。 
「おい」
「今度はもう少し保つと思う。な?」
「いいか?」って聞いておいて、俺が意見を言う前に圭吾が動き出した。
 一旦体を離し、外したコンドームをティッシュに丸め、次のパッケージを破っている。
「お、すぐ出来そう」
 装着しながら嬉しそうな声を出し、また俺の上にのしかかってきた。
「圭吾、おい……んっ」
 顔を横にして唇を塞ぎ、やっぱり俺に何も言わせずに、足を持ち上げられる。
「……ぁ、あっ……っ」
 嫌だと抗議する暇もなく大きく開かれ、腰が浮き上がったような格好をさせられる。
 完全に上を向かされた俺のそこに、圭吾の先端が宛がわれた。
「……や、ぁ、あ、あっ、ぁっ、……ぁ」
 さっきの指と同じように、少しだけ入り込み、入り口をクチュクチュとかき回す。出ていってはまたほんのちょっと入り、抜き差しして、少しずつ進んできた。
「あっ、あっ」
 上を向かされた足が胸に付くぐらいに折りたたまれ、その上から圭吾の大きな身体が揺れながら浸入してくる。
 広げるように、回しながら入ってきた腰がいったん止まると、今度は掴んでいた俺の足を揺らし、その動きに合わせるようにして小刻みに振るわせた。
「ぁああ……っ」
「……痛いか?」
 痛くはない。だけど、よく分からない感覚で、俺は圭吾の腕に掴まっていた指に力を込めた。
 上下させていた動きを、ぐりぐりと回すように変えて、それからまた少し奥へと進んでくる。
「やっ、ぁあ、あっ、んんんぅ、あぅ」
 さっきまで我慢出来ていた声が、圭吾の動きに押されるように迸る。
「孝介……」
 揺れながら名前を呼ばれても返事が出来ない。声が勝手に口から発せられ、どうにか抑えようと首を振った。
「孝介」
 呼びかけながら、圭吾の動きが早くなってくる。
「や……待っ……ぇ、あっ、ぁっ」
 ちょっと待てと言っているのに圭吾が聞いてくれない。いやいやと首を振る俺の顔に付いてくるように圭吾の唇が重なる。声と息ごと全部を吸われた。
 さっきよりも痛みは和らいでいるが、全然痛くないわけじゃない。だけど、いっぱいに入っている圭吾が揺れると、腰の奥のほうからズクンと痺れるような感覚がくる。
 もう一度体を起こし、またひざ裏を持たれて動かしてきた。キスがなくなって呼吸が楽になったけど、密着していた圭吾の体も離れてしまい、前への刺激がなくなった。
「や……ぁ」
 前を触ってほしい。
 だけどそんなことが言えるはずもなくて、俺は掴まっていた圭吾の腕に爪を立てた。
「……まだ、痛いか?」
 揺れながらお門違いな気遣いをみせて、圭吾が聞いてきた。


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