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さよならの前に君に伝えたかったこと
9

 その日の圭吾はずっと俺のことを考えてくれたみたいで、長いこと俺は圭吾と一緒にいることができた。俺が死んだあの頃みたいに、圭吾はずっと長い時間俺のことを考えてくれた。
 だから俺も久しぶりに、つぎはぎすることなく、続けて色々と考えることが出来た。それがいいことなのか悪いことなのかは分からなかったけれど。
 圭吾は気づいただろうか。俺がお前の傍にずっといたことを。それでどう思っただろうか。
 知ったら苦しむだろうか。
 自分が圭吾の立場だったらどう思うだろう。
 親友が、自分のせいで事故で死んだと思っている。その親友が自分の傍についている。ずっと。それはどんな気持ちだろう。
 俺なら……嫌かも。
 そう考えるのはとても辛いことだけれど、きっと圭吾は気味悪がるんじゃないかな。だって、俺だって幽霊なんかと会いたくないもの。怖いし。
 実際の俺はてんで怖くないけど、でも死んだ奴がそばにいると思ったら、嫌だよなぁ。
 俺のことを恨んでるのかと思うかもしれない。お祓いに行かれたりしたらどうしよう。っていうか、お祓いされたら俺、消えるのかな? それもよくわからなかった。あーもう、どうすればいいんだよ。
 さっきのあいつも面倒みてくれる気がないんなら、不用意に俺のことをばらすなよな。だいたい不親切すぎねえか? 死んだ奴がお願いしてるっていうのに。あんまり邪険にすると、化けて出てやるぞって脅しとけばよかった。化けて出方もわからないけど。つうか、今の状態が化けてるのか?
 ベッドに仰向けに寝ていた圭吾が呟いた。
「なあ、祥弘。お前、ここにいるのか?」
 いるって言いたい。圭吾に俺の存在をわかってもらいたい。
 だけどその方法がないんだ。お前を闇雲に不安がらせるだけで、どうする事も出来ない。


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