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LOVE LOVE LOVE
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「……ごめんね」
 竹内から電話が入り、遊ぼうと誘われて、ついうっかり今こっちに帰る途中なのだと言ってしまったと、うさちゃんが小さな声で謝った。そしてどうしても付いてくるというのを振り切れなかったと。
「いいよ。久し振りにあいつの馬鹿話聞けて、俺も楽しいし」
「昼は食べた? 辰郎くん」
「俺、食ってねえし!」
「君には聞いてないけど、マルガリータ」
 相変わらず傍若無人な竹内のために、持って帰ってきた餅をさっそく焼くことになった。
 トースターで焼いた餅に醤油を付けて、海苔で巻くと、その側から竹内が取っていく。
「チーズ載せて焼く?」
「あ、それも食う食う」
「だから食べ過ぎだって、いくつ目だよ、竹内」
 いったいいつから食べてないんだと思うような食べっぷりで竹内が餅を平らげていく。
「辰郎だって食ってんじゃんよ。それ八個目だろ」
「俺は食うんだよ、平常時でも」
 俺んちからもらってきた分と、うさちゃんが持ってきた分で、二、三日は保つんじゃないかと思われた餅は、たったの一食でなくなってしまった。
「はーあ、満腹だあ。……さて、じゃあそろそろやるかなっ」
「何を?」
 まだ自分の分の餅を皿に残しているうさちゃんが聞き、竹内がニヤ、と笑った。
「そりゃあ、持ち物検査だろうが。男ふたり暮らしだろ? いかがわしいものが隠してあるに違いないっ! まずは、こっちか! 辰郎の部屋は」
 そう言って立ち上がった竹内が、俺の部屋だと見当をつけたほうに飛び込んでいった。
 相変わらず元気な竹内を見送って、リビングに残ったふたりで顔を見合わせる。まったく本当に変わらない。
「……大丈夫?」
 うさちゃんが心配そうに俺の顔を覗いてくる。
「うん。大丈夫」
 竹内が来るという連絡を受けた俺は、こういう状況を想定して、予め隠しておいたのだ。竹内が喜びそうな、いかがわしいものを。
「エロビは? なあ、ねーよ? どこにも」
 探し物が見つからない竹内が俺の部屋から出てきて、今度はうさちゃんの部屋に入っていく。
「雑誌でもいいわけよ。無修正とかさあ」
「マルガリータ。部屋入るのはいいけど、あんまり散らかさないで。借りた本とかあるから。汚さないでよ」
「本? どんな本?」
「マルガリータが期待してるような本じゃないから」
「なんだよぉ、せいぶつがくてきぶんめいろん、って。ぶりおんせつとか知らねーよ」
「僕は読むの。ちょ、出さないで」
 目当てのものが見つからない竹内は、肩を落としてリビングに戻ってきた。
「竹内、おまえ彼女できたのか?」
「できねーよ! できてたらこんなとこに今いねーよ」
「……だろうね」
「なんだよ。委員長だっていないくせに!」
「なんで決めつける」
 八つ当たり気味の竹内の暴言に、うさちゃんが憤然と言い返していた。


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