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LOVE LOVE LOVE
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 そんなふたりの言い合いを笑って眺めている。まだ一年も経っていないのに、その光景は、なんだかすごく懐かしい気がした。
 高校のときの教室で、学校帰りや休みの日にも、こんな風にして騒いでいた。ああ、一緒に卒業旅行にも行ったんだっけ。
 そのもっとずっと前は、同じ教室にいるクラスメートでも、ほとんど接点がなかった三人だった。俺とうさちゃんも、竹内と俺も、うさちゃんと竹内も、どうということのない、ああ、そういえば同じクラスだな、というぐらいの認識だったのに。
 それが二年前のあの初詣の日から、何となく親しくなって、そしていつの間にか竹内が入り込んでいて、最後の半年ぐらいはずっと三人で連んでいた。不思議なもんだ。
 卒業して離ればなれになっていても、久し振りに会えば、こうしてすぐに前のような空気が出来上がる。竹内が馬鹿やって、うさちゃんがそれに突っ込んで、俺は笑っている。たぶん来年も、五年後に会っても、もしかしたら二十年後とかに会ったとしても、案外このままなのかもな、なんて、相変わらずエロビエロビと叫んでいる竹内を見ながら思った。
「あー、なんかホッとするな。こうやって話してると」
 竹内が大袈裟な溜息を吐き、今俺が考えていることと同じようなことを言った。
「大学入ったらさあ、どんなパラダイスが待ってるかと思ってたのに」
「だいたいマルガリータはどんなパラダイスなことを期待してたわけ?」
「そりゃああ、合コン三昧で、いろいろ楽しいこと満載で、身体がいくつあっても足りない感じ?」
「それが竹内のパラダイスか」
「全然そうじゃねーのよ、これが。なんつーか、俺が馬鹿言うだろ? そうすると周りが冷たいわけよ。『あー、馬鹿言ってんな、こいつ』って目で見るわけよ」
「馬鹿言ってるんならそう思ってるんだろうね、周りも」
「そうだけど、違うのよ。空気がさ、冷たいんだよなあ」
 高校時代に戻りてえよと、珍しく竹内が打ちひしがれている。
「でもマルガリータみたいなタイプって、一緒にいて楽しいんじゃない? ほら、お祭り騒ぎ大好きだし。明るいし」
 そんな竹内に同情したのか、うさちゃんが俄に慰めだした。
「周りもきっと言わないだけで、マルガリータの存在に感謝してると思うよ。僕だってそうだったし」
「……そう?」
「うん」
「そう? やっぱり?」
「……うん」
 たったこれだけの励ましで、元気を取り戻した竹内は、晴れやかな笑顔で「ありがとう。よし! 決めた。今日はここに泊まっていく」と、高らかに宣言した。


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