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うさちゃんと辰郎くん
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 僕の足の間に割り入れるようにして辰郎君の腰が入ってくる。
 キスをしながら揺れる身体に合わせ、僕も身体を揺らめかす。
 さらさらだった肌の感触が、お互いの熱で湿り気を帯びてくる。
 息の音と布団の擦れる音と、ほんの僅かの水音と、ときどき漏れるお互いの小さな声。
「たつろ……く……」
 お腹で擦られていた場所がどんどん熱くなっていって、もう、なんかもう、我慢できなくなってきた。
「たつろ……」
 首に回した腕に力を込めると、辰郎君が揺れながら僕の顔を覗き、耳を囓った。
「あっ……」
 耳たぶを噛んで、その場所をペロペロと舐めてくる。身体は揺れたまま、下りてきた手が胸を摘む。
「んん、ぁ……ん」
 顎が上がり、思わず飛び出した声を、慌てて唇を噛んで封じ込める。
 辰郎君が身体を浮かし、擦られていた刺激がなくなる。ふぅ、ふぅ、と息を吐き、態勢を整えようとする間もなく、胸にあった手が下りていき、いきなりそこを掴まれた。
「あああっ……んっ」
 やばい。
 すごく大きい声が出ちゃった。
 辰郎君も僕の声に驚いたらしく、ピタッと動きが止まる。
 しばらく動きを止めたまま、下の様子を窺った。
 階下は静かなままだ。
 動きを止めたまま、お互いを見つめ合う。辰郎君の笑っている白い歯が見え、僕も笑った。
「……びっくりした」
「……すみません」
 ひそひそ声でそんな会話を交わす。
 瞼にキスをされ、それがまた唇に下りてくる。
 声が出そうになったらこれで塞いでもらおうと、自分から辰郎君の唇に吸い付きながら、僕も腕を下ろし、辰郎君のそこをそっと包んだ。
「……ん」
 小さく声を上げた辰郎君が、はあ、と溜息を吐いている。
 キスをしながらお互いをやさしく可愛がる。体温と同じに熱いそれは、先端が濡れていた。
「辰郎くん……」
 僕が名前を呼ぶと、辰郎君は確かめるように僕の目を覗き、それから枕元に並べてあるものに視線を移した。手を伸ばしてそのうちの一つを取ろうとしている。
 ああ。
 とうとう。
 辰郎君の……Lサイズが、僕の……。
 突然、階下でガチャガチャと騒がしい音が響き、バタン、と玄関のドアが開く音がした。
 ゴロン、ゴロン、と床が鳴るのはたぶん脱いだ靴が落ちた音だ。
 姉ちゃんが帰ってきたのだ。
 今度は奥の部屋からパタパタとスリッパが鳴る音がして、母さんも起きてきた。
 二人で会話を交わしている。
 母さんが小言を言い、姉ちゃんが笑っている。
 ドタドタと階段を昇る音がして、乱暴に隣のドアが開き、閉まった。
 壁の向こうが騒がしい。
「……うさちゃん。痛い」
 辰郎君が情けない声を上げ、僕は握り込んでいた掌の力を緩めた。
「ごめん」
 突然の物音に、僕は辰郎君のLサイズを力一杯握っていた。


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