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うさちゃんと辰郎くん
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 辰郎君の……Lサイズが僕のに当たる。
 合わさった二つを大きな手で包み、辰郎君が揺れ始めた。
「んぅ、ぁ、ん」
 ギュッとトレーナーを掴んで、強く口に押し付けて目を瞑った。
 すぐにあの感覚がやってくる。
 辰郎君の動きに合わせて僕も揺れながら、辰郎君の熱い吐息がおでこにかかるのを感じていた。
「……ふっ、ぁ……ぁ……っ、っ」
 背中が撓り、腰を突き上げるような態勢のまま、大きく仰け反った。
「……っ、……は……ぁ……っ」
 涙が零れ、溜息と共に、僕の熱が放たれる。
 濡れた手を、尚も動かし、辰郎君の息も荒くなっていく。
「……ぅ、っ……く……っ」
 息を詰め、小さく鳴いた辰郎君もすぐに追いついて、僕のお腹にそれがかかった。
「は……っ、は……」
 ゆっくりと動かしながら、辰郎君が大きく息を吐いた。
 気が付くと、階下は静かになっていて、姉ちゃんはドライヤーを使い終わっていたらしい。
 パタパタとまた階段を昇ってくる足音がして、僕たちは重なったまままま姉ちゃんが通り過ぎるのを待った。
 バタン、と隣のドアが閉まり、隣の部屋に気配が戻ってきた。
「やばかったな」
 辰郎君がティッシュに手を伸ばし、後始末をしてくれる。
「いつもはもうちょっと長いんだけどな。ドライヤー」
「そうなの?」
 もう。なんで今日に限って髪を乾かすのが早いんだろう。いつもはもっと長いのに。
 そしたら先に進めたかもしれないのに。
「間一髪」
 それでも満足そうに辰郎君が笑ったので、僕も笑った。
 こんな急ぎ足で、こそこそしながらの二人の夜だったけど、辰郎君は喜んでくれたみたいだ。
 もちろん、僕だって嬉しい。
 とても、とても気持ちが良かったし。
「でもビビッたな」
 僕が「そう?」と答えると、辰郎君は驚いたような顔を作る。
「うさちゃんて……」
「なに?」
「意外と」
「なんだよ」
 感心したように僕を見て、それから、わは、って笑って抱き付いてきた。
「卒業旅行さ、絶対に離れにあるコテージにしような」
 急に話題を変えてくる辰郎君に、僕は「なんで?」って首を傾げた。
「なんででも」
 相変わらず楽しそうに辰郎君が答える。
「僕はどこでもいいけど」
「いや、コテージがいい」
「お金掛かるよ? 僕は民宿みたいなところでも全然構わないけど」
 辰郎君と旅行ができるなら、どこだって構わない僕だったけれど、辰郎君は「絶対に駄目」と言って、それからまた笑った。


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