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うさちゃんと辰郎くん |
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荷物を降ろし、買ってきた飲み物なんかを冷蔵庫にしまう。自炊をするといっても、学校のキャンプでの炊きだしぐらいしか経験のない僕たちだ。買ってきたのは当然カップラーメンとか、すぐに食べられるサンドイッチとか、レンジで温められるお総菜とか、そんなものばかりだった。 僕がキッチンでガサゴソやっている間、辰郎君は全部の部屋の扉を開けて探検して周り、窓を開けて外を見たり、浴室で歌ったりしていた。家族で宿泊する客のために、アヒルのおもちゃが置いてあって、辰郎君が喜んでいた。 春とはいってもまだ風は冷たくて、外を歩いたときはポカポカの陽気だったけれど、日が沈んだら寒そうだなと、辰郎君の開け放した窓の外を見た。 「取りあえず、お茶でも飲む?」 備え付けの電気ポットに水を入れ、スイッチを押していると、後ろから辰郎君が抱き付いてきた。 「うさちゃん、もういい?」 「ええと……」 もういい? とは何を指して言っているのかは分っているわけで、僕としてもそれはやぶさかではないのだが、でも、じゃあやりましょう! とは僕も言えなくて、っていうか、辰郎君いきなりすぎじゃないですか? 僕の葛藤をよそに、辰郎君は僕の髪の毛をくんくん嗅いでいる。後ろから羽交い締めにされて、揺らされて、僕の頭をかぷ、って噛んでから、そのまま「はぁあ」って息を当ててきた。 噛まれている頭が辰郎君の息で熱い。 「お風呂、入りたい」 辰郎くんに頭を噛まれたまま、僕は訴える。 「お風呂? そのあと? お風呂入った後じゃなきゃ駄目?」 後ろから抱き付いている辰郎君が焦れたような声を出した。 「うん」 僕がそう言うと、辰郎君はちょっとぐずるようにもう一度僕の身体を揺らしてから「分かった」と言って離れた。 開放され、辰郎君の方に向き直る。 「お風呂湧いたら……一緒に、その……入る?」 小さな声で誘ったら、辰郎君はニパッと笑って「入る!」と叫び、脱兎の如く風呂場に飛んで行った。 入れたお茶を二人で飲んでいる間、辰郎君は何度も浴室を見に行った。お茶を飲む暇もないくらいに忙しそうだった。 「うさちゃん、沸いた!」 浴室から辰郎君が叫ぶ声が聞こえ、僕は吹き出しそうになりながら、立ち上がった。 脱衣所に入ると、辰郎君は既に服を脱いでおり、モタモタしている僕の袖を引っ張ってくる。バンザイさせられてシャツをもぎ取られ、引っ張られるようにしてバスルームに連れ込まれた。 修学旅行でも、京都の旅行でもみんなで風呂には入っていたから、お互いに裸になることにはそれほど抵抗はない。 向かい合って洗いっこして、髪も洗って、二人で大きな浴槽に入った。 |
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