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うさちゃんと辰郎くん
79

「強すぎた?」
「う……ん、恐……ぃ。それ、嫌だ」
 正直に恐いと訴えた。これは恐い。自分が自分じゃなくなる。
「ちょっとずつな。恐くなくなるまで慣らしていく?」
 やさしく言われて、小さく頷いた。
 シーツに落ちていく涙を、辰郎君がペロっと舐める。三本の指は僕の中を占領して自由に動き回り、時々あの場所に触れ、そして離れて行く。
 辰郎君は僕の表情を観察しながら、キスをし、掌で身体を撫で、僕が少しずつ慣れていくのを待ってくれた。
「うさちゃん……中、柔らかくなってきた」
「ぅ……ん」
「俺の、入りそう?」
「わ、かんない、よ」
「入れてみるか……?」
 あくまで僕に意見を聞く。僕が駄目だと言ったら辰郎君はきっとまだ我慢をするのだろう。
「いい……よ。入れて」
「本当? 大丈夫そう?」
「うん」
 ずっと僕の中にいた指が引き抜かれた。ベッドの上に用意してあったコンドームを取り、辰郎君が準備をしている。
 もう一度僕の上にやって来た辰郎君が、さっきまで指が占領していた箇所に先端を宛がってきた。身体を柔かくし、大きく息を吐きながら、僕も受け入れる準備をする。
 グイっと先端を埋め、辰郎君の喉がく、と鳴った。
「……これ、いきなり入れちゃ、まずいよな」
 ほんの少しだけ入り込んだそれはその場に留まり、この先にいこうかどうか迷っているようだった。
「平気。全然痛くない」
 本当は少し痛かったけど、ずっと我慢をしている辰郎君が愛しくて、僕は嘘を吐いた。
 だけど辰郎君は僕の嘘を見破っているようで、ほんのりと口元を綻ばせ、ゆっくりと、やさしく、進んでくれた。
 たぶんまだ半分も入り込んでいない状態で、辰郎君が「……ああ」と溜息を吐く。
「なんか……やばい。もうイキそう」
 腰を揺らしながら情けない声が聞こえ、僕は辰郎君を抱き締めた。
「頑張って」
 僕の励ましに、辰郎君はまた溜息を吐きながら「……頑張る。でもイっちゃたらごめんな」と、先に謝ってきた。
「あっ」
「出ちゃった?」
「……っ、まだ大丈夫」
「辰郎君」
「……ちょっと出ちゃった」
「あら」
「でもまだいける」
 宣言通り、まだ質量の減っていない辰郎君が、ズイっと進んでくる。
「本当だ」
「だろ?」
「偉いね」
「うん。相当俺、頑張ってる」
 一旦埋め込んだ場所から引き、また戻って来る。
「あっ」
 今度は僕が声を上げる。
「痛い?」
「違う」
「気持ちいい?」
「……ええと」
 正直に、よく分からないと答えた。
「でも痛くはないよ」
「そうか」
 嘘ではない感想を述べると、辰郎君は安心したように笑った。
 僕の顔の横に両手を付いていた辰郎君が身体を起こした。ひざの下を持ち、大きく広げながら更に進んできた。
「ああ、あっ、あっ」
「もうちょっと……」
 押しては引き、ときどきその場に留まったまま腰を回し、そうしながらとうとうピッタリとはまり込んだ。
「全部、いった」
「うん」
 僕の肌に辰郎君の肌がピッタリと合わさっている感触に、僕は頷く。
「分かる?」
「うん。分かる」
「痛く、ない?」
「そんなに。大丈夫」
 質問に素直に答えていると、僕の膝を持ち上げたまま、今来た道を引きずるようにして戻り、もう一度押し入ってきた。
「はぁあぁあ……っ」
 入り込んでくると同時に押されるように声と溜息が漏れた。
 何度か同じ動きを繰り返し、それが早さを増してくる。
「あ、あ、あ、」
「……痛くない? うさちゃん、痛くない?」
 僕に聞きながら、辰郎君の声の方が泣きそうに聞える。
 足を大きく開き、辰郎君を受け入れたまま、その大きな腰に掴まり、自分も腰を揺らめかせながら動きを促した。
 僕の誘導に付いてくるように辰郎君が腰を回し、打ち付けてくる。
 前立腺の辺りを掠めると、背中が撓り、声が上がる。僕が感じ始めたことを知り、辰郎君の動きが変わった。


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