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うさちゃんと辰郎くん |
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「強すぎた?」 「う……ん、恐……ぃ。それ、嫌だ」 正直に恐いと訴えた。これは恐い。自分が自分じゃなくなる。 「ちょっとずつな。恐くなくなるまで慣らしていく?」 やさしく言われて、小さく頷いた。 シーツに落ちていく涙を、辰郎君がペロっと舐める。三本の指は僕の中を占領して自由に動き回り、時々あの場所に触れ、そして離れて行く。 辰郎君は僕の表情を観察しながら、キスをし、掌で身体を撫で、僕が少しずつ慣れていくのを待ってくれた。 「うさちゃん……中、柔らかくなってきた」 「ぅ……ん」 「俺の、入りそう?」 「わ、かんない、よ」 「入れてみるか……?」 あくまで僕に意見を聞く。僕が駄目だと言ったら辰郎君はきっとまだ我慢をするのだろう。 「いい……よ。入れて」 「本当? 大丈夫そう?」 「うん」 ずっと僕の中にいた指が引き抜かれた。ベッドの上に用意してあったコンドームを取り、辰郎君が準備をしている。 もう一度僕の上にやって来た辰郎君が、さっきまで指が占領していた箇所に先端を宛がってきた。身体を柔かくし、大きく息を吐きながら、僕も受け入れる準備をする。 グイっと先端を埋め、辰郎君の喉がく、と鳴った。 「……これ、いきなり入れちゃ、まずいよな」 ほんの少しだけ入り込んだそれはその場に留まり、この先にいこうかどうか迷っているようだった。 「平気。全然痛くない」 本当は少し痛かったけど、ずっと我慢をしている辰郎君が愛しくて、僕は嘘を吐いた。 だけど辰郎君は僕の嘘を見破っているようで、ほんのりと口元を綻ばせ、ゆっくりと、やさしく、進んでくれた。 たぶんまだ半分も入り込んでいない状態で、辰郎君が「……ああ」と溜息を吐く。 「なんか……やばい。もうイキそう」 腰を揺らしながら情けない声が聞こえ、僕は辰郎君を抱き締めた。 「頑張って」 僕の励ましに、辰郎君はまた溜息を吐きながら「……頑張る。でもイっちゃたらごめんな」と、先に謝ってきた。 「あっ」 「出ちゃった?」 「……っ、まだ大丈夫」 「辰郎君」 「……ちょっと出ちゃった」 「あら」 「でもまだいける」 宣言通り、まだ質量の減っていない辰郎君が、ズイっと進んでくる。 「本当だ」 「だろ?」 「偉いね」 「うん。相当俺、頑張ってる」 一旦埋め込んだ場所から引き、また戻って来る。 「あっ」 今度は僕が声を上げる。 「痛い?」 「違う」 「気持ちいい?」 「……ええと」 正直に、よく分からないと答えた。 「でも痛くはないよ」 「そうか」 嘘ではない感想を述べると、辰郎君は安心したように笑った。 僕の顔の横に両手を付いていた辰郎君が身体を起こした。ひざの下を持ち、大きく広げながら更に進んできた。 「ああ、あっ、あっ」 「もうちょっと……」 押しては引き、ときどきその場に留まったまま腰を回し、そうしながらとうとうピッタリとはまり込んだ。 「全部、いった」 「うん」 僕の肌に辰郎君の肌がピッタリと合わさっている感触に、僕は頷く。 「分かる?」 「うん。分かる」 「痛く、ない?」 「そんなに。大丈夫」 質問に素直に答えていると、僕の膝を持ち上げたまま、今来た道を引きずるようにして戻り、もう一度押し入ってきた。 「はぁあぁあ……っ」 入り込んでくると同時に押されるように声と溜息が漏れた。 何度か同じ動きを繰り返し、それが早さを増してくる。 「あ、あ、あ、」 「……痛くない? うさちゃん、痛くない?」 僕に聞きながら、辰郎君の声の方が泣きそうに聞える。 足を大きく開き、辰郎君を受け入れたまま、その大きな腰に掴まり、自分も腰を揺らめかせながら動きを促した。 僕の誘導に付いてくるように辰郎君が腰を回し、打ち付けてくる。 前立腺の辺りを掠めると、背中が撓り、声が上がる。僕が感じ始めたことを知り、辰郎君の動きが変わった。 |
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